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God is in the details

神は細部に宿る〜細かいところのこだわり

· 開発ストーリー

備忘録:各パーツ毎の苦労

<本体>

・音が悪くならず、往年のソリストが肩当て無しで構えていたような姿勢で持てる、パーフェクトな肩当てを!

・取り付け位置を既存のものと変える。数々の楽器で高音側、低音側両方試し、高音側の方が音が良いことが分かる。

・取り付け位置が決まったことで、必要な導線(形状)が大まかに決まる。

・低い熱で変形するプラ板で肩回りの型取りをし、支えて欲しい所と、邪魔で触って欲しくないところを検討する。

・2×4材で、削っては装着感を確かめる作業を、数十本と繰り返す。本体素材の選定も進め、硬さや密度の違う材料を試す。

・装着感と同時に、人の目に留まる「美しさ」も必要と気付き、身体に当接しない支持部は厚みを残し強度を担保しながら、大胆に肉抜きをしていく。

・美しい湾曲と美しい支持部を持ったモデルが出来たのだが、身体との当接部にウレタンを貼ってみると、大きな違和感を覚える。原因は、木のままとウレタン使用時のグリップ力と弾力(沈み込み)の差。ウレタン使用を前提とし、当接面の形状を見直す。

・楽器の大きさに対応する為のアジャスター部は煮詰め足りなかったが、アポの取れた工場へ試作品を持ち込み、意見を聞く。

・一社目は3Dスキャンをし、3Dプリンターで造形するので、思い通りの形を実現できるが、右を左に写すだけで10万を超えると言われ断念。

・二社目は型抜きを専門としており、かなりの期待をしていたが、厚みに限界があり、単板では強度が出ないし、強度を出すためにはプラモデルのような複数のパーツを貼り合せる事(ビリツキ音の原因)になる。ということで断念。(後に足の整形を依頼する)

・三社目は切削を専門とする業者だが、かなり幅広い業種との連携があり、この会社を軸として、本体、板金、高低音両側のネジ受け台座など主要なパーツを依頼することになる。

・紹介されたアクリル加工の専門業者に試作品を見てもらう。板厚で強度は出せるが、アクリル単板を曲げることが基本と言われ、立体的な造形の変更を余儀なくされる。

・一枚のアクリル板で木材の形を再現すると、強度不足が顕著になり、曲り、たわみ、ねじれなど強度の問題を解決させると、あまりにも不細工な形になる。

・三次元的な隆起を、ゆるやかな、おおよそ二次元的な「曲げ」にしてもなお、装着感を損なわないために試行錯誤を始める。

・肝となる、角度や高さ、幅、足ネジ用台座、調整用アジャスター(以後「スライダー」)に至るまで再考した図案を業者に持ち込み、プロの手による試作を依頼する。

・実に美しく作ってくれた物を前に、量産不可能と宣言され、更なる本体形状の簡素化を図らなければならなくなる。同時にスライダーの決定的な強度不足が分かり、スライダーおよび台座の素材と設計を変更する。

・肩当ての使用感を大きく左右するのが、肩当て当接面の角度である。肩から胸にかけて寄り添うような角度でないと、急斜面にエッジを立てて立っているスキーヤーの様に、肩や胸をえぐることになる。大きな径の、曲げやねじりまでも禁じ手になり、当接面の角度や高さを表現するために残された手段は、直線のみとなった。あらゆる角度やあらゆる距離で板を折り、心地よい形を見つけて楽器に取り付けてみると、全く納まらない。流麗な曲線に目が行くが、楽器のコバ部分は完全な直線なのである。曲線の集合である人間の身体と直線的な楽器に、いくつかの直線だけで対応することが、いかに困難だったか。(この試行錯誤の中、単純な形状の方が当初の目標に近いことに気付く)

・徹底的に単純な二角・三直線での実現に成功する。

・ここからは、ヴァイオリン(以後「Vn」)とヴィオラ(以後「Va」)のそれぞれの良い点をミックスしながら、着地点を探す作業を行い、微調整を繰り返し完成モデルへと成長させていく。具体的には、Vn、Va共に使用者は、体格差はあれど同じ「人間」であり、楽器の大きさや重さに関わらず、身体が必要とするポイントは同じであることから、肩当てがサポートしてやる距離と角度は共通とした。

<スライダー(板金)>

・従来の肩当てでは、楽器の狭い側から広い側へ向けて、肩当てを両側に広げながら合わせるため、大雑把な調整でもフィットするが、HOMAREは片方の位置が固定されているため、より細かい区切りで調整できないと脱落、または装着できないことが容易に想像できた。

・最初はスライダー中央に長い距離と平行なスリットを切り、無段階に調整できるものを考案した。デメリットとして、使用者が適切な位置を見つけにくいこと、スライダーの全長を極端に長くしないと様々な大きさの楽器に対応できないこと、ネジでの締め付けトルクがかなり必要で、手締めだとサイズが変わりやすいこと、それを防止するための技術が現実的でないこと、などが想像できたので却下する。

・従来方式(スライダーに一定間隔のネジ穴)で細かく調整できるよう、穴(ネジ)径を小さくし、穴の数を増やすことで対応した。

・スライダーだけで対応させると、調整できる幅がスライダーの穴に準じた距離になり、広すぎるため、本体側にも調整できる要素を持たせる。

・従来品同様、本体に雄ネジを固定する方法だと調整機構を付加できないため、本体側を雌ネジで複数箇所、スライダー穴の間隔とずらして(スライダー5ミリ、本体8ミリ)設定した。これにより両端を除き、1~3ミリ間隔での調整が可能となる。また、本体に複数の穴を設けることにより、スライダー全長を短く出来、Vn、Va共用のパーツとすることが出来た。

・高音側は低音側に比べ、重量が軽い方が良いが、強度と粘りのバランスが必要な部品なので、サイズや素材を決定するまでに幾つかのパターンを試さねばならなかった。

・折り曲げ角も、本体側スライダー支持部との兼ね合いで、90度から鈍角110度まで検証する。

・従来品と異なりHOMAREは、身体に合わせて本体の角度を変える必要がないため、より単純な切り欠きで高音側台座を取り付けられるが、一度嵌めると通常の使用では動かせない事が条件となる。

・真鍮の切り欠きに脱落防止の機能を持たせると、台座挿入時にどちらかが壊れる可能性があるため、台座で対応することとなる。

<高音台座>

・楽器に装着するとき、高音側の足が軽い力で回ってしまうと片手での装着が困難になるため、雌雄ネジの密着度を高める。そのうえで、抜き差しの回数が増えても使用感が変わらないようにするため、樹脂素材の選定は専門家との相談を重ねた。

・スライダーに取り付けるためのスリットクリアランスは、前記条件なのだが、製作時に出てしまう公差や温度による素材の膨張率など、不確定な要素をクリアするためにいくつもの試作を繰り返す。

<ウレタン>

・どれも同じなようで、原料や硬度、厚さほんの1ミリの違いで大きく装着感が異なる。

・ホームセンターで購入した原料の違う5ミリと10ミリを使い装着感を確認していく。柔らかい5ミリだと加圧で底付きしてしまい、10ミリだと気持ちは良いが、ブヨブヨと不安定感が出る。硬い5ミリだとしっかり感があるが、女性が長時間直接肌に乗せると痛みを感じそうだ。10ミリだと分厚いうえに、跳ね返されそうな感覚だ。

・ウレタン専門業者の工場を訪ね、5ミリ~10ミリの厚さ、三種類の硬度でサンプルを作ってもらい、硬度15の7ミリ厚に決定する。

・はがれにくさを考え、パッドの角を落とす。

・一方で、経年劣化などでパッドのみ交換できるよう、プラスティック製の両面テープを採用。

・本体形状の高低差に対応できるか検証。

<足>

・楽器の響きを止めてしまう大きな要素は、直接楽器に触れている足であることを発見する。

・広い範囲で支えているものと、小さく狭い範囲で支えるもの、エラストマ(表出している樹脂)が硬いものと柔らかいもの、裏板を中心に支えるものと横板を積極的に使って支えるもの、足自体は楽器を捕まえず、装着するテンションで支えるものと、足が装着部を握りしめるものなど、それらを高音側と低音側で同種、また異なる種類の組み合わせで装着し、音色の検証をする。

・天然素材のニスに悪影響が出にくく、適度なグリップ力があり、外れにくい材料を相談する。

・いくつもの検証を重ね、足の幅は意外にも大きくない方が外れにくいと分かった。肩当てへの加重は、常に直上から直下方向ではなく、斜め方向への入力も度々ある。その時、入力された方向の外側、つまりミドルバウツ側の(足の)爪までの距離が遠いほど「てこ」の力が大きくなり、ねばる事も出来ずに外れるのである。エラストマについても、柔らかい方が耐えてくれそうな気がするが、硬軟のどちらに寄り過ぎても結果は同じである。

・HOMAREの特徴でもある左右非対称の爪は、高音側取付け部「C」内側の横板に爪をはじかれることなく、裏板のヘリを抱き込める角度になっている。この設計によって、上記条件を満たしたうえ、片足ずつの専用設計を必要とせず、商品価格の圧縮に一役買っている。

<ローレット(スライダー固定用)ネジ>

・最も注目されないパーツでありながら、数少ない調整のタイミングの度、ストレスを溜めることになる。

・上記のとおりHOMAREでは高音側は軽い方が良いのだが、調整時しっかりと締めこむことが出来ないと、ビリツキの原因や、適正な楽器への締め付けが出来なくなるため、使用感や音色への影響が予想される。

・握力や指の太さに関わらず、締め付けやすいツマミの大きさと形状を検証するため、条件に該当する市販品を取り寄せ、一つずつ脱着検証をする。

・締め心地の観点から候補を二つまで絞り込んだが、一方は製作精度が低く、ネジ部(よび)の長さが公差コンマ3ミリ程もあり、切断面も面取りが施されておらず、さわり心地が悪かったため却下する。これは、適切に締めこんであるかを、締め付けトルクと本体から飛び出した突起の高さでダブルチェック出来るように配慮したものである。およそコンマ6ミリの突起になるように設定した理由は、一般的なキャッシュカードやクレジットカードのエンボス情報や、盲人用の点字の高さに準じたものだ。

 

 

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